配転命令に関する判例紹介

配転命令の有効性に関する裁判例をご紹介します。

 

大阪高裁平成27年11月19日判決(テーエス運輸ほか(配転)事件です。

 

前提知識として、配転が有効とされるには、

①配転命令権が労働協約や就業規則の定めなどによって根拠づけられている必要があります。

②業務上の必要性がないとき、不当な動機・目的によるものであるとき、労働者に通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を負わせるような権利の濫用にあたらないことが必要です(東亜ペイント事件判決)。

 

今回ご紹介する判例では、以下のとおり、配転命令は有効と判断されました。

 

1 事案の概要

運輸会社(以下Y社」)に雇用されている運転手であり、労働組合の役員であった労働者(以下「Xら」)が、配転命令を受けた。Xらは、かかる配転命令は違法であり、従前の営業所での就労に従事しようとしたところこれを拒否され就労できなかった期間を欠勤扱いとされ、賃金等の一部が支払われなかったと主張して、従前の営業所で勤務を継続していた場合との賃金差額等を請求した原審の控訴審。

 

2 争点

①本件配転命令が不当労働行為(労組法7条)に該当するか。

②配転を拒否して不就労となったことは、労働者に帰責すべき休業といえるか

 

3 判旨

Ⅰ ①について、Xらは、当該配転命令は、不当な目的をもってなされているため不当労働行為に当たり無効であると主張する。

確かに、本件配転命令により勤務地が変更になることで、Xらが中心的人物となっている労働組合の活動に少なからぬ影響が出ることは避けられない。しかし、両営業所間は鉄道で2時間ほどの距離であり、昨今の通信方法の発達を考慮すると、不当労働行為性を帯びるほどの著しい不利益を課すものとはいえない。

したがって、本件配転命令は不当労働行為に該当せず、有効である。

Ⅱ 本件配転命令について、Xらが配転命令先の営業所に勤務すべき労働契約上の義務がないことを認める仮処分決定がなされているところ、当該仮処分決定がY社に告知された後であっても、Xらが元の営業所において労務の提供をすることは債務の本旨に従った履行の提供とはいえない。そのため、Y社がこれを欠勤扱いとしたことは違法とはいえない。その後の本案訴訟(控訴審)で本件配転命令が有効と認められれば、当該仮処分は遡って無効であるからである。