能力不足・適格性を理由とする解雇が認められる場合について

当事務所では、解雇に関する相談をよく受けます。

先日も解雇を告げられた方が復職したいとの相談を受け、地位保全、賃金仮払いの仮処分の申立を行いました。

今日は能力不足を理由とする解雇が認められる場合はどのような場合なのか簡単にお話します。

能力・適格性の欠如は、解雇の合理的理由となり得ます。

しかし、それが正当とされるのは、当該労働者に求められている職務能力を考慮の上、労働契約の継続を期待しがたいほど重大な程度に達している場合に限られます。

すなわち、①再三の指導・教育や研修機会の付与によっても容易に是正し難い程度に達し、職務遂行上の支障またはその蓋然性を発生させていることを要します。

使用者側の評価(人事考課)は、一資料にとどまります。

また、この点が肯定されても、②配転・降格等によって当該労働者の能力を活用する余地があれば、それら措置によって雇用を継続する努力が求められます。

職種転換が求められる範囲については、労働契約内容や企業規模によっても異なり、職種を特定して雇用したために他の職種で活用する余地がない場合は、異職種への配転を考慮する必要はないし、小企業規模で職種転換の余地がない場合も同様です。また、さらに、勤務状況があまりに不良で是正の可能性が客観的に認められない場合も、特段の回避努力は求められないと思われます。

指導・教育や配転・降格等によってもなお能力・適性が向上せず、改善の余地がない場合は、労働契約の継続を期待することは困難となるため、解雇は正当な解雇といえます。